英語力を活かした経理での仕事内容とは?
英語力を活かした経理の仕事には、例えば次のようなものがあります。
子会社や支店が海外にある場合
海外にも子会社や支店を持つ会社の場合、英語力が必要な業務が多くあります。
何故なら、連結決算に海外の子会社や支店分も含める必要があるからです。
例えば、次のような場面で英語力が必要とされます。
・連結決算に関する説明
…日取りやルールなどに関する現地への案内(メール・電話・出張など)
・提出された決算内容の確認
…誤りや疑問点がある場合、現地と確認
・現地の社外関係者とのやりとり
…現地の法律や現地基準を、国内外のパートナーと確認
取引先企業が海外にある場合
取引先が海外にある場合にも、英語力が必要とされます。
取引先が海外にある場合、次のような場面で英語力が必要です。
- 日常的な取引…金銭債権の残高確認、請求書・領収書の確認
- 契約時の確認…契約書の内容の確認、船積みの条件や国際税務規定の確認
- トラブル発生時…金銭債権の不履行や破産などが生じた際のトラブル対応
本社が海外にある場合
外資系企業などで本社が海外にある場合にも、英語力が必要とされることが多いです。
本社が海外にある場合、次のような場面で英語力が必要とされます。
・英語の文章を読む場面
…経理の社内ルールが英文により作成されている場合、経理計上の管理システムなどのインターフェースが英語となっている場合
・外注先とのやとりの場面
…経費精算や計上システムの外注先が海外にある場合
・社内での英語でのやりとり
…海外本社開催のセミナーが英語の場合、上司が外国人の場合、決算数字の本国への報告や問い合わせへの回答
海外の企業を買収する場合
海外の企業を買収するに当たっても、英語力が必要となるケースがあります。
何故なら、海外の企業を買収するにあたり、IFRSや海外の法律を参照することが多く、IFRSや海外の法律も原文は英文で作成されているからです。
また英語の文章を読んで理解するだけでなく、英語で読んだものを日本語に直して関係部署や取引先に案内する必要もあるでしょう。
英語力があると、経理の年収は上がる?
各種調査で、英語力と年収の関係性が示されています。
英語力と年収の関係
英語力と年収に関係があるとされている調査は、複数あります。
年収 | ~500万円 | 500~800万円 | 800万円~ |
上級(流暢)レベル | 7% | 18% | 75% |
ビジネスレベル | 6% | 29% | 66% |
中級(日常会話)レベル | 13% | 37% | 49% |
初級(挨拶)レベル | 15% | 47% | 37% |
参照:「英語レベルと年収」 (エンワールド・ジャパン株式会社)
調査から、全てのレベルで英語のレベルと年収に相関があることがわかります。
英検と年収の関係
英検(実用英語技能検定)と年収の間にも関係性があるというデータがあります。
公益財団法人日本英語検定協会は、40代、50代男性の英検最終取得級別の平均年収について調査をしています。
その回答は次の通りとなっています。
- 40代…英検準2級682万円、英検2級688万円、英検準1級680万円、英検1級899万円
- 50代…英検準2級618万円、英検2級789万円、英検準1級879万円、英検1級1115万円
参照:「英語力とQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の関係性調査結果」(公益財団法人日本英語検定協会)
この調査の結果から、英語検定のレベルが上がるほど、年収も増える傾向にあると言えるでしょう。今回の調査は勤務年数が多くなり年収差が開いていると考えられる40代・50代に限ったものでしたが、他の世代も同様の傾向にある可能性があると考えられるでしょう。
TOEICの点数と年収の関係
TOIECの点数と年収の間にも、相関関係があるというデータがあります。
dodaはTOEICの点数と年収の関係性を調査しており、TOEICの点数と年収の関係性は次のように示されました。
- 400点台…502万円
- 500点台…495万円
- 600点台…505万円
- 700点台…513万円
- 800点台…546万円
- 900点台…573万円
参照:「平均年収/生涯賃金データ2013年」(パーソルキャリア)
600点台を超えると、TOEICの点数と年収は相関性を持つ傾向です。
TOEICと経理マンの年収について、詳しくは次の記事で解説しています。
>>内部リンク:「経理 転職 TOEIC」
経理マンが英語力をアピールできる資格
経理マンが英語力をアピールできる資格としてはTOEIC・USCPA・BATIC等が代表的なものとなります。
TOEIC・USCPA・BATICそれぞれについて、どの程度のレベルがあるとアピールできるのかご説明します。
TOEICは620点以上で有利に
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会は、企業が採用の参考・要件とするTOIECの点数を調査しており、中途採用には620点を求めるとしています。
参照:「上場企業における英語活用実態調査」(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)
当調査から、TOEICを転職活動で活かす場合には620点を超える点数を持っていると、選考に有利になると考えられるでしょう。
また、外資系企業については730点程度が1つの目安です。
USCPAは外資系企業でも有利に
Abitus社はUSCPA合格者を対象に合格後の就職先を調査しています。この調査では、USCPAの合格者の約半分は外資系企業とされています。
参照:「USCPA(米国公認会計士)転職サポート」(Abitus)
外資系企業でUSCPA所有者が優遇される理由は、次のとおりです。
- 外資系企業では、特に英文会計への深い理解が必要となるため。
- アメリカ本社に対する学問的理解があるとみなされるため。
- 外資系企業では、日本よりも資格が重視されることが多いため。
なお、外資系企業だけでなく、日系企業でも次のような業務でUSCPAを活かすことができます。
- 海外支店や取引先の決算書の確認
- 米国株主への決算内容説明・開示
- 海外企業の買収や海外拠点拡の大を検討する際のやりとりや現地ルールの確認
USCPAは経理の知識はもちろんのこと、高い英語力を持つことの証明ともなります。USCPAをお持ちの場合、会計知識と合わせて英語力もアピールできるでしょう。
BATICはBookkeeper Levelで有利に
2021年までBATICは1000点満点中点数に応じて4段階でレベルが評価されていました。
求人ボックスのサイトでは、レベル別の求人数は次のようになっています。
- Controller Level以上…8件
- Accounting Manager Level以上…7件
- Accountant Level以上…22件
- Bookkeeper Level以上…24件
参照:2022年1月時点 求人ボックス の求人検索
BATICは、どのレベルでも評価の対象となる求人があるようです。
Accounting ManagerやController Levelなどの高いレベルになるほど、求められる業務内容のレベルも高くなり、年収も上がりやすくなるでしょう。
なおBATICは2021年からリニューアルされ、400点満点のスコアとなっています。
まだ求人に反映されている例は少ないですが、徐々に移行されていくと考えられます。
外資系の経理に転職する際、TOEICの点数は何点必要?
外資系経理ではTOEIC730点程度が目安となることが多いです。
日系企業の海外部門と比べて英語での業務が多くなる傾向にあるため、求められるTOEICの点数はさらに高くなるためです。
外資系企業では業務で英語を使う場面が多く発生するため、TOEIC730点以上の英語能力があると安心でしょう。
経理マンに求められるTOEICの点数について、詳しくは次の記事で解説しています。
>>内部リンク:「経理 転職 TOEIC」
英語力があれば、未経験でも経理に転職できる?
未経験であっても、英語力を活かして経理に転職できるケースがあります。
未経験可の求人数
事業会社の経理の求人の内訳は、次のとおりです。
- 全体の求人数…1093件
- “未経験可”の求人数…55件
- “未経験可“でかつ“英語力が活かせる“求人数…8件
参照:2022年1月時点レックスアドバイザーズの求人検索
この調査からも、未経験可の求人の中でも英語力を活かせる求人は複数あることがわかります。また求人に“英語力が活かせる“と記載ない場合でも、企業によっては英語力を活かせる業務があるかもしれないので、確認すると良いでしょう。
未経験で英語力をいかす業務
未経験可で英語力が必要とされる求人の中では、海外に支店や取引先を持つ日系企業が多くなっています。
未経験の場合、次のような業務からの開始とされていることが多いです。
- 海外支店の連結決算の中で、比較的簡単な業務やアシスタント
- 海外支店の損益進捗管理や原価計算の中で、比較的簡単な業務やアシスタント
- 海外取引先との日常的なやりとり
ただし将来的には経理のプロとして活躍されている案件が多いため、普段の業務を行いながら自身経理を勉強していく意欲は必要となるでしょう。
資格取得のサポートがある場合も
事業会社の経理の中には、資格取得を時間面や金銭面でサポートしている会社もあります。
“資格取得支援“の記載がある求人数は、次の通りでした。
- 事業会社経理の全体の求人数…1093件
- 事業会社の経理のうち、“資格取得支援”としている求人数…89件
参照:2022年1月時点レックスアドバイザーズ求人検索
中には“資格取得費全額負担+取得お祝い金制度”を設けている企業や、独自の資格取得奨励制度を福利厚生に入れている企業もあります。
未経験や資格未取得の場合、こういった資格サポートの制度も参考にすると良いでしょう。
英語力を活かした経理マンの、その後のキャリアプラン
英語力を活かして昇給や昇進に活かしたり、今後の転職によるキャリアアップにつなげたりすることもできます。
昇給や昇進
TOEICの点数は、昇給や昇進に有利になる場合があります。
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会は、昇進・昇給にTOEICを要件・参考とするかのアンケート調査を実施し、結果は次のようになりました。
- TOEICを要件・参考として利用する会社…係長・主任で27.8%、役員で22.9%の
- TOEICを要件・参考として利用する点数…係長・主任で515点、役員で600点
参照:「上場企業における英語活用実態調査」(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)
この調査からもTOEICが昇進・昇給の参考にされているケースがあることがわかります。日々の業務は評価が定性的になりやすいこともありますが、TOEICの点数は定量的であるため、モチベーション維持につなげやすいです。働きながらさらに英語力を高め、管理職を目指していくのも選択肢の一つとなります。
海外赴任
海外赴任にも基本的に英語力が必要です。
経理では、次のような場合に出張が必要となることがあります。
・海外子会社に赴任する場合
…連結決算のルールや日程の説明、グループの方針の説明、経営改善に向けた取り組み、契約締結時トラブル発生時などに営業に同行して経理側面の確認等
・海外本社に赴任する場合
…海外本社で開催のセミナーへの出席、海外本社での業務や報告等
英語ができることで赴任の機会が回ってきやすくなるため、自身の経験を広げることができるでしょう。
外資系企業への就職
マーサージャパンは、参加企業863社に対して業界や年次別の報酬を調査しています。この調査の中で、財務経理職のおける日系企業と外資系企業それぞれの年収(手当・賞与込み)の平均を調査し、結果は次のようになりました。
- 日系企業…一般社員1-3年目 435万円、一般社員3-5年目 536万円
- 外資系企業…一般社員1-3年目 494万円、一般社員3-5年目 597万円
参照:2021年 「日本報酬サーベイ」 (Mercer)
この調査結果では、日系企業と外資系企業の年収に50万円以上の差があります。
外資系企業は人数が少ない分年収が高くなる傾向にあるので、英語力を活かして外資系企業に就職することで年収が上がる可能性があると考えられるでしょう。
転職によるキャリアアップ
TOEICの点数を生かして、転職を繰り返しキャリアアップしていくことも選択肢の1つです。
上述の通りTOEICの点数は転職活動にも有利に働く傾向があり、TOEICの点数が高いほど年収も高い傾向にありました。
TOEICの点数で自身の英語力を示すことで、転職先でもより幅の広い業務に携われる可能性が広がります。TOEICの点数と業務経験を生かしてさらに転職を繰り返しながら年収を上げていくことも、大きくキャリアアップするための選択肢になるでしょう。
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